浜松聖星高等学校は1956年に、静岡県西部地区唯一のカトリック・ミッションスクールとして設立された。学校設置者である学校法人浜松海の星学院の寄附行為第3条は「カトリック的世界観に立脚した私立学校教育を行うことを目的とする」と規定している。
カトリック教会は、人は皆教育を受ける普遍的権利を有するものであるとし、次のように言う。
「真の教育は、人間の究極目的の達成に向けて、また人間がその成員の一人として所属し、成人後はその役割を分担する社会が目指す善の実現に向けて、人格を形成していく。」(カトリック教会第二バチカン公会議「キリスト教的教育に関する宣言」)
また、本校の設立母体であるスピノラ修道女会は、カトリック学校について次のように言う。
「(カトリック学校は)キリスト教的人間観と人生観に沿って教育し、より一層連帯感のある世界の構築に協力し、人類に影響を及ぼす重大問題を信仰の光に照らしながら、基本的人権の促進に努めます。」(スピノラ修道女会「教育理念」)
以上に見るとおり、カトリック学校のミッションは、生徒がキリスト教の人間観に基づいた人格を形成し、社会の善(「共通善」)の実現に貢献するよう教育することにある。
本校は、戦後間もない時期に日本の復興をキリスト教教育によって助けようという熱意に燃えてフランスから来日した聖ベルナルド女子修道会の3人のシスターを中心に設立された。その後1998年に、設立母体はスペインに本部を置くスピノラ修道女会に替わったが、建学の精神は引き継がれ現在に至っている。さらに2017年に共学化を果たし、校名を現在のように変更した後も建学の精神は堅持されている。
その建学の精神を最もよく表すものは、校訓「真理を学び 愛に生きよ 真理と愛こそ人生の光」である。イエス・キリストは「わたしは道、真理、命」(ヨハネ14:6)であると言われた。本校に学ぶ者は、キリストの教えを通して真理とは何かを学び、人生の目標とする。ここに真理とは、第一に学問の真理、第二に道徳の真理、第三に信仰の真理をいう。また、イエス・キリストは「神は愛である。わたしがあなたがたを愛したように、互いに愛し合いなさい」(ヨハネ13:34)と言われた。本校に学ぶ者は、キリストの生き方に倣って愛の実践に務める。
このように建学の精神は、イエス・キリストの教えを通して真理とは何かを学び、イエス・キリストに倣って愛の実践に務める人間を育てることにある。
建学の精神に基づく本校のミッションは、生徒がキリストの真理を学んで調和のとれた人格を形成し、キリストの隣人愛により社会の善の実現に貢献するよう育てることにある。また、本校が立地する浜松地域は、近代以後内発的な産業展開により世界的企業を生み出してきた地域であり、近年は南米出身の日系人をはじめ外国人が多く住む地域となっている。しかしながら、現状では地域産業は世界的なデジタル化・サービス化の流れに沿った転換ができておらず、外国人との共生にも多くの課題を抱えている。このような状況は当地域だけの問題ではなく、日本の問題を先取りしているとも言える。したがって、本校の存在意義は、創立以来の国際性とキリスト教精神に加えて、現代の科学・テクノロジーに重点を置いた教育をすることにより、豊かで調和のとれた、新しい経済・社会をつくる人間を育てることにある。
さらに、本校に学ぶ生徒の意向、期待を見ると、創立以来キリスト教に基づく心の教育に惹かれる生徒や留学・語学教育などの国際教育に関心を持つ生徒が多いことに加えて、共学化以降理系に進む生徒も増えている。全体に学力が向上し、4年制大学への進学希望が強まっている。
以上のような本校のミッション、存在意義および生徒の意向を踏まえて、本校の教育の目標を「隣人愛の実践により世界に貢献する人間を育てる」ことに置く。
キリスト教の人間観において、人間の人格の尊厳は、神にかたどり、神に似せて造られたことに根ざしている。霊的な不滅の霊魂と知性と自由な意志を備えた人間の人格は神へと秩序づけられており、霊魂と肉体ともども永遠の至福に向けて召されている(「カトリック教会のカテキズム要約」)。
このような人間観に基づき、生徒の人格の形成に当たっては、個人の人格の尊厳、知性および自由を尊重する。また、これらを生徒、保護者、教職員、理事その他すべての学校関係者間の相互関係の基本に置く。
カトリック学校として、毎日のお祈りと聖歌、宗教の授業、チャペル・アワー、宗教行事など宗教教育を実践する。
設立母体であるスピノラ修道女会のみならず、カトリック浜松教会や横浜司教区などとの結びつきを大切にする。
「日本カトリック学校としての自己点検評価基準」(1997年2月24日 日本カトリック司教協議会 承認)に基づいて常に自己点検評価を行い、カトリック学校としてのアイデンティティを保つ。
教育形態として学校が真の教育共同体となることを目的とする(スピノラ修道女会「教育理念」)。教育共同体を構成するのは、設立母体としてのスピノラ修道女会と、理事会、教職員、生徒、保護者である。
教育共同体においては、その参加者すべてが本校の理念を理解し、積極的に協力し、連帯して責任を負う。
現代社会の要請に応える教育を実践する。
そのため、すべての教科を通じ、政治、経済、文化、歴史、科学技術、環境などさまざまな分野にわたって現代社会を反映した授業を行い、生徒の現代社会についての理解を深める。また、語学やICT・データサイエンスなど現代社会の課題を解決するために有用な知識技能を身につけさせる。
教授法についても、教育学、教授学や心理学、認知科学などの新しい成果を積極的に取り入れ、現代化に務める。また、生徒の多様性をプラスの価値として活かすため、一斉・画一的な学びではなく、個別最適な学び、協働的な学びを大切にする。
現代社会の社会的・文化的多元性の中で、本校への入学を望む人を可能な限り平等に受け入れる姿勢を持つ(スピノラ修道女会「教育理念」)。
生徒が社会をよりよく知り、知識を深めることができるよう、「開かれた教育課程」を実施する。そのため、自治体、産業界、NPO法人や大学などと連携・協力体制を築き、研究者や実践者を招くとともに、社会的課題についての探究活動を実践する。また、福祉、環境、教育などさまざまな分野のボランティア活動により地域に貢献する。
現代の世界の特質は、地球上のすべての人間がネットワークによって直接結ばれ、お互いに強く影響しあっていること、そしてICT、データサイエンスや生命科学など科学技術の著しい発達により人類が未だかつてない大きな力を獲得しつつあること、また気候変動など人類の存続に関わる地球規模の問題に直面していることにある。
このような特質を持つ世界において共通善の実現に貢献する人間を育てるため、本校はカトリック学校として「心の教育」を土台としながら、「国際教養教育」と「理数(STEAM)教育」に重点を置く。
カトリック学校の変わらぬバックボーンは、キリスト教的人間観に基づき、社会において最も弱いものに寄り添う心を育むことにある。したがって、学校生活全体を通して、生徒の内に隣人愛の精神を養うべく「心の教育」を行う。また、欧米文明の根幹を為すキリスト教を知ることにより、世界の多様性の理解を深めることにつなげる。
本校が国際的な修道女会を設立母体とするミッションスクールであるという特性、また、本校が所在する浜松市が多くの世界企業を生み出した産業都市であり、近年はブラジル人をはじめ多くの外国人が住む地方都市であるという地域性から、生徒の国際性の育成を重点とする。
そのため、日本を含めた各地域・民族の歴史・文化・社会の多様性についての理解を深め、語学を土台にした異文化間コミュニケーション能力を身につける「国際教養教育」を行う。
現在世界各国が理数教育に力を注いでいるのに対し、日本の科学技術力は年々低下の一方にあり、新しい社会の仕組みを創造する人材も不足している。特に、世界レベルの「ものづくり」で発展してきた浜松地域においては、経済のデジタル化・サービス化に対応した新しい科学技術や産業を生み出す人材の必要性は一層大きい。
学校教育がこのような社会の必要に応えるためには理数教育(STEAM=Science,Technology,Engineering,Arts,Mathematics)の充実が不可欠である。科学の本質やその影響力を正しく理解する科学リテラシーとICTなど科学技術の応用能力を身につけていくことは、個人がこれからの社会を生きていくうえで重要であるだけでなく、現代の地球規模の問題の解決や社会的な善の実現のために必須である。
本校は現代社会の要請に応え、ICTを最大限活用した教育法により現代社会に適応する能力を育て、変革を生み出す主体を育成していく。
本校が望む生徒を受け入れるために、幅広く教科教育を行う普通科を設置し、以下のとおりコースを編成する。
浜松聖星高校においては、キリスト教の世界観に基づく「心の教育」と「国際教養教育」を文科系・理科系を問わずすべての教育の基本に置き、主として生徒の進路に対応して「特進コース」と「進学コース」を設ける。その上さらに、理数教育に重点を置いた「理数コース」を設置する。浜松聖星高校は、「理数(STEAM)教育」を「国際教養教育」と並ぶ教育の柱とすることで、現代社会の要請に応えながら普通科教育の特色化を進める。
コース構成は「理数コース」、「特進コース」、「進学コース」の3コースとする。「特進コース」および「進学コース」は2学年進級時に文理の選択を行う。それぞれのコース間で、2学年進級時に、本人の希望および一定の学力基準によってコース替えを行う。3学年進級時には本人の希望および校長面談によって「特進コース」と「進学コース」間でコース替えを行う。
「調和のとれた人格を有し、キリストの隣人愛により社会の善の実現に貢献できる人物」の育成を目指す。そのために、以下の3つの重点的な資質・能力を育てる。
教育課程の編成に当たっては、次の諸点を基本とする。
2学年、3学年のカリキュラムの中に理数科の科目である「理数化学」8単位に加え、「理数物理」と「理数生物」を選択必修科目として8単位を設定、計16単位履修することをコースの特色とする。「情報Ⅱ」も選択授業として設定、必修科目である「情報Ⅰ」を発展させた高度な知識と技術の修得を可能とする。また、1学年では総合的な探究の時間において、「科学探究」を履修、科学の方法論を学ぶとともに、現代社会における様々な課題を科学的見地から究明していく取り組みをする。ただ、理数コースはあくまでも普通科の範疇を逸脱するものではなく、国語科「古典探究」と外国語科「英語コミュニケーション」を必修とし、計14単位を履修することで文理バランスの維持を図る。
本校は中学校を併設していないため、低学年次においては基礎科目と高等学校での必履修科目を中心に配置、高学年次に向かって、文科系・理科系に特化した応用科目、選択科目を配置する。ただ、文科系・理科系の区分はある意味で便宜的なものであり、これからの社会では文科・理科の区分を超えた学際的な発想が求められる。そこで、特進コース、進学コースともに文科系を選択した生徒も数学科については、2学年で「数学Ⅱ」と「数学B」を、3学年で「数学C」を必修とし、理科系を選択した生徒も国語科「古典探究」は2学年、3学年で、外国語科「論理表現Ⅰ」は2学年で必修とするなど、生徒個人の教養が文理どちらかに極端に偏ることがないよう、バランスをとりながら教科指導を行う。また、理数コース同様、「情報Ⅰ」は1学年で修了し、2学年では理科系の生徒を対象に「情報Ⅱ」の選択授業を設定する。さらに、探究学習の時間の中に「宗教」とは別に「グローバル・スタディーズ」を入れることにより、キリスト教への見識を深めるとともに、探究の方法を学びながら国際的、学際的な課題解決に取り組む。さらに、芸術選択科目の選択肢を「音楽Ⅰ」に絞り、本校で開催される宗教行事や祭儀などでの聖歌斉唱の質を向上させることで、カトリック学校に所属する生徒としてのアイデンティティ形成を図る。また、「物理基礎」や「化学基礎」、「生物基礎」など、理科の基礎科目については文科系選択で1~2単位の増単位を図り、理科系選択では「物理」・「化学」・「生物」の専門科目について、大幅な増単位を図る。
本校が受け入れたいと望む生徒の像は以下のとおりである。